私には「お兄ちゃん」と呼ぶ
10歳年上の従兄弟がいます
従兄弟をお兄ちゃんと呼ぶのはなんだかおかしいのかもしれませんが
関西出身のお兄ちゃんが受験の時だったり、はたまた新入社員だった頃は
家族のように一緒に住んでいたこともあり
子供の頃から「お兄ちゃん」」と呼ばせてもらっているのです
◇
その”お兄ちゃん”も、もう定年間近だった2020年3月
一緒に母と姉のお墓参りに行った次の日
職場で脳出血で倒れ救急搬送
一命は取り止めたものの病院で目覚めたときは
動けず、そして自分の名前も住所も何もわからなかったといいます
脳出血の後遺症は
右半身麻痺と失語症を含む高次脳機能障害
失望のどん底に突き落とされました
◇
この失語症というもの、(私も全く知らなかったのでありますが)
上手く話せない、などという単純なものでなく
読む、書く、聞く、話す
という言葉に関する働き全てに影響をもたらし
目の前の文章が理解できない、書けない、人の言葉が理解できない、言葉が出てこない
などというもの
にわかにはとても理解し難い障害
ですが何より
言葉をほぼ全てのコミュニケーションとする人間にとって、その困難は想像を絶します
しかしそんな中、初めにお兄ちゃんが発した言葉が
「いつ職場復帰できますか」
というもの
それは周囲の人たちを驚かせ、到底無理だと思われた発言であります
◇
しかしそれからお兄ちゃんは自らの職場復帰に向けて
異例のリハビリ計画を決行し1年半後には職場復帰
そして同時に
SNSを使って情報発信
リハビリの一環で始めたカラオケをYouTube発信
これが反響を呼び、自ら「失語症のためのカラオケコンテスト」を主催、発信
また
失語症の理解と失語症同士が支え合える団体「言葉をつむぐ会」を結成
その様々な活動は広がり続け、お兄ちゃんは雑誌や新聞に取り上げられ
NHK文化センターで講座したり、先日は
日本音楽協会が主催する「音健アワード2023コミュニティ部門表彰式」で
「言葉をつむぐ会」が特別賞を受賞
審査委員長の湯川れいこさんと映る誇らしい姿がラインで送られてきました
◇
あり得ないほどのスピードで職場に復帰し
そこでも会社に甘えるのではなく
今ではその活動を通して職場に貢献している
この、仕事への執着、熱意
なんであろう
◇
この3年余り
こちらの心配や同情など跳ね除けて
凄まじい努力と、それを行動に繋げてきた
お兄ちゃん
こちらがそのパワーをいただいていました
文章にするとあまりに簡単になってしまいますが
本当に本当に素晴らしい
先日、高齢の父を訪ねてくれたとき、
「この障害になってよかった」
と言っていたと聞き、震えました
障害を”与えられたチャンス”と捉えていると
◇
あらためて
生きるとは何か
そして
人間のしあわせとは何か
考えさせられる
◇
とにかく
天晴れ!お兄ちゃん!
なのであります